
こんにちは、SORESEKAこと「それは、世界遺産がきっかけだった。」編集長のMamiです。
今回は世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産でもある熊野古道を通って熊野三山・那智を参詣してきたので、その時の様子を交えながら初心者おすすめルート・モデルコースをご紹介します。
熊野古道・那智の滝・熊野那智大社・青岸渡寺を半日で参詣したい方の参考になれば幸いです。
*長文記事ですので、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産や熊野古道の複数ルートについてご存知の方は、現地到着した旅レポ開始パートまで飛んでいただいても大丈夫です。
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」とは

世界遺産「熊野那智大社」での一枚
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」は和歌山県・奈良県・三重県の3県にまたがり、複数の構成資産から成り立っています。
今回巡った熊野に焦点を当てた概要は下表の通りです。
*今回は2泊3日の旅で、公共交通機関を利用。この記事で紹介するのは1日目の黄色で、2日目の緑、3日目の青は別記事にて。
「紀伊山地の霊場」の主な構成資産 | |
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吉野・大峯 | 吉野山など |
高野山 | 金剛峯寺など |
熊野三山 | 熊野本宮大社 |
熊野速玉大社 | |
熊野那智大社 | |
那智大滝 | |
青岸渡寺 | |
補陀洛山寺 | |
那智原始林 | |
鬼ヶ城 | |
獅子岩 | |
花の窟(はなのいわや) | |
七里御浜(しちりみはま) |
「紀伊山地の参詣道」の構成資産 | |
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参詣道 | 大峯奥駈道 |
高野参詣道 | |
熊野参詣道(複数のルートは後述) |
古代から聖地として信仰を集めてきた紀伊山地には霊場が点在しており、これら霊場とそれらを結ぶ参詣道は、日本古来の自然崇拝から生まれた神道と、大陸伝来の仏教が融合した「神仏習合」の思想をよくあらわしています。
そして紀伊山地は、各霊場の神社や仏教寺院などの建造物と、周辺の森林や滝などの自然環境が一体となった景観を形成しており、この景観が1,000年以上保存されている点が高く評価され、日本で初めて文化的景観が認められる世界遺産となりました。
今回、熊野・那智を訪れたことで、単なる「社寺と道」ではなく、紀伊山地の自然があってこそ成り立つ「自然崇拝の聖地」「山岳信仰の霊場と山岳修行の道」というのを実感することができました。
熊野古道を観光する場合は3つのエリアを事前に把握しよう

画像引用:田辺市熊野ツーリズムビューロー HPより
熊野「観光」に焦点を当てると、熊野三山は大きく3つのエリアに分かれています。
- 熊野本宮大社
- 熊野速玉大社
- 熊野那智大社
そして、これら聖地へと続く巡礼の道でもある熊野古道にはいくつかのルートがあります。
- 京都から大阪・和歌山を経て田辺に至る「紀伊路」
- 田辺から山中に分け入り熊野本宮を経て那智・新宮へ向かう「中辺路(なかへち)」
- 田辺から海岸線沿いに那智・新宮へ向かう「大辺路(おおへち)」
- 高野山から熊野へ向かう「小辺路(こへち)」
- 伊勢と熊野を結ぶ「伊勢路」
なお、「熊野参詣道」として世界遺産に登録されているのは、中辺路・大辺路・小辺路です。
以上を踏まえ、「熊野古道を観光したいな」と思った場合、観光時間や体力などを考慮して、具体的にどのエリアを訪れたいのか、どの参詣道を歩きたいのか、を最初に決める必要があります。

今回は京都から公共交通機関を活用して2泊3日の熊野の世界遺産巡りをしてきました。以下の記事では、1日目の熊野・那智エリアの様子をお届けします。
京都・大阪から那智の最寄駅である紀伊勝浦へ
京都から新大阪へ。
そして、「新大阪駅」からJR「紀伊勝浦駅」まで、特急「くろしお」(全席指定席)に乗って向かいます。
京都・大阪から熊野古道の「紀伊路」と「大辺路」を電車で進むイメージ。
観光のことを考えると、昼頃までには紀伊勝浦に到着したいところ。
平日だと本数に限りがあり早朝便しかありませんでしたが、土日だと程よい時間帯の便もありました。
約4時間の電車の旅ですが、綺麗な上に、前の座席との間隔も広くて快適。
景色を楽しめる展望ラウンジ車両もありました。
お天気がもってくれるか心配しながら、紀伊勝浦駅に到着。
那智エリアのお得なバス乗車券
JR「紀伊勝浦駅」からはバスに乗って那智方面に向かいます。
駅前にあるバス案内所の方が少しお得な乗車券を教えてくださいました。
- 那智エリア世界遺産フリー乗車券 1,200円(往復利用で60円ほどお得)
- バス乗車券 1,110円
紀伊勝浦駅⇄那智駅⇄大門坂⇄熊野古道⇄那智の滝前⇄那智山
1と2の違いは、熊野古道の中でも石段が美しい場所の一つ「大門坂」を歩くかどうかです(熊野那智大社・青岸渡寺まで約45分)。
大門坂バス停で降りて、大門坂を歩く方は2のチケットがおすすめですが、割引は適用されていないようなのと、バス車内はクレジットカードのタッチ決済にも対応していたので、時間がなければそのままバスに乗り込んでいいと思います。
今回は、雨が降りそうだったので、大門坂を歩く当初の予定を変更して、1のチケットで「那智の滝前」バス停まで一気に行くことにしました。
世界遺産「那智の滝」と「飛瀧神社」
バス停「那智の滝前」で下車すると、熊野那智大社の別宮「飛瀧神社」が目の前に。
飛瀧神社の御神体である「那智の滝」はこの奥に存在します。
少し歩くと、静謐な空気に包まれ、木々の隙間から那智の滝が見えてきました。
落差13mと、日本一の落差を誇る大滝。
断崖をまっすぐ落ちる大滝からは、轟音とともに、神々しい空気が放たれているように感じました。
社伝によると、神武天皇が熊野へ上陸された際、那智の山に光が輝くのを見て探り当てたそう。
ここに立つと、自然への畏敬の念、自然崇拝の起源が感じられる気がしました。
熊野詣の最終地とされる那智。
古来より熊野詣の最後に辿り着いた参拝者たちもまた、山間にあるこの大滝のエネルギーに圧倒されたかもしれないですね。
世界遺産「熊野古道」を歩く
続いて、「那智の滝」から「青岸渡寺」そして隣接する「熊野那智大社」へと、徒歩15分ほどですが「熊野古道」を歩いて向かいます。
最初は石段を一段ずつ噛み締めるように登っていましたが、徐々に息が上がり、汗が吹き出してくる…。
しばらく登ると、那智の滝の遥拝所があったので、振り返ってみると、
木々の隙間から美しい白い糸が見えました。
さらに、さらに、石段を登ると、ついに「青岸渡寺」と「熊野那智大社」の足元に到着。
紀伊の山々は美しいけれど、息切れが…。
手前が「青岸渡寺」、奥が「熊野那智大社」。
どちらから参詣するのが、階段が少ないかと迷いつつも、手前の「青岸渡寺」の階段を進むことに。
世界遺産「那智山 青岸渡寺」
世界遺産「那智山 青岸渡寺」は天台宗の寺院。
花で飾られた手水舎で手と口を清め本堂へ。
明治の神仏分離までは、熊野那智大社と一体をなす、那智の滝を中心にした神仏習合の一大修験道場だったそう。
現在の本堂は、豊臣秀吉が再建したもので、国の重要文化財にも指定されています。
展望ポイントからは三重塔と那智の滝の大パノラマを楽しむこともできます。
那智の大滝ぶりを再認識。
敷地内にあるこちらの門をくぐると、隣接する「熊野那智大社」へと進めます。
世界遺産「熊野那智大社」
世界遺産「熊野那智大社」は、6棟からなる鮮やかな朱塗りの社殿と背後の緑色の社叢とのコントラストが美しい。
自然崇拝を象徴する神社で、神聖な空気に包まれた気分になります。
こちらは神武天皇を大和に案内した八咫烏の銅像で、大任を終えて石化したと言われる「烏石」も(気づかなかった)。
参拝後は、写真右側にある大きな楠の中をくぐり上がる「樟霊社 胎内くぐり」というユニークな体験をしてきました。
備え付けの護摩木(300円)・祈願絵馬(500円)に願い事と氏名を記し、
これを奉持して樹齢850年の大楠の中へ。
大楠の中は空洞になっており、根元からくぐることで無病息災を願うというもので、大楠から出たら出口の護摩木・絵馬掛けに納めます。
お寺の柱くぐりはしたことがありましたが、神社の御神木くぐりは初めての体験だったのに加え、小説『クスノキの女神』を先日読んだところだったので、より感慨深かったです(小説の舞台は佐賀県の武雄神社ですが)。
那智の圧倒的な自然のパワーを満喫したあとは、石段を10分ほどかけて下り、今度は「那智山」バス停から「紀伊勝浦駅」バス停まで戻りました。
熊野古道・那智観光の初心者用モデルコースと所要時間は?
雨が降るかもしれなかったので、紀伊勝浦駅からバスで「那智の滝」まで一気に向かい、そこから「熊野古道」を歩いて登って「青岸渡寺」と「熊野那智大社」を参詣し、バスで紀伊勝浦駅まで戻ってきた今回のルートの場合、所要時間は約3時間でした。
冒頭でお伝えしたように、バスを途中下車して「大門坂」から歩く場合は+約45分みておく必要がありますし、大門坂には平安衣装体験できるお店もあるので、優美な平安衣装をと思うなら、さらに時間をとっておいた方が良いです。
また、バスで終点の「那智山」まで最初に登り切って、下りながら逆ルートを行く方法もあります。
お天気・時間・体力などを考慮して、ぜひ悠久の祈りの道を満喫してください。
▼今回の熊野・那智観光の際に宿泊した、紀伊勝浦駅近くにあるホテル浦島
