こんにちは、SORESEKAこと「それは、世界遺産がきっかけだった。」編集長のMamiです。
今回は、五島列島を旅しながら、世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を巡ってきました。
五島列島の観光ハイライトと、教会を見学する際の3つのポイントをご紹介します。
世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」とは
世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、17世紀から19世紀にかけて、約250年間にわたるキリスト教禁教政策の下で、日本の伝統的宗教と共生しながら、ひそかに信仰を伝えた人々の歴史を物語る遺産群です。
長崎県と熊本県に残る12の構成資産から成り立っていますが、今回は、長崎県の五島列島11島を旅しながら、3つの構成資産(教会)を巡りました。
- 頭ケ島の集落:頭ケ島天主堂
- 奈留島の江上集落:江上天主堂
- 久賀島の集落:旧五輪教会堂
「五島列島観光」と「世界遺産巡り」の両方を楽しんでいただけたら嬉しいです。
五島列島観光と世界遺産巡り
早速、五島列島11島めぐり旅のハイライトをお届けします。
なお、五島列島の教会では、内部の写真撮影は禁止されていますので、教会は外観のみとなりますが、特徴をお届けできればと思います。
鬼岳(福江島)
鬼岳は、山全体が芝生におおわれた美しい臼状の火山。
この日は風が強かったのですが、芝生でふかふかしていて、歩くと気持ちよかったです。
鬼岳(315m)は五島のシンボル的存在で、福江島へ向かう飛行機の中からでも目立っていました。
写真は冬なので茶色ですが、春〜夏は鮮やかな緑色に。
朝ドラ『舞いあがれ!』でも登場するそうです。
堂崎教会(福江島)
堂崎教会は、赤レンガのゴシック様式。五島最古の洋風建築物です。
内部ですが、ミサなどの儀式がないときは資料館となっており、写真を含む当時の資料がたくさん展示されていました。
青砂ヶ浦教会(中通島)
青砂ヶ浦教会は、鉄川与助さんによる初期のレンガ造りの教会。
写真では分かりにくいかもしれませんが、レンガの焼き色の違いを生かして、レンガを積みながら十字柄が外壁面に施されています。
また、ヨーロッパの教会とは異なり、五島列島の教会では、建物の上部で鐘を見かけません。
鐘は高価な輸入品で、後から設置されることが多かったため、写真のように、鐘塔は教会脇に建てられていることが多いです。
ちなみに、鉄川与助さんは五島出身の建築家で、たくさんの教会を建設したものの、生涯、仏教徒を貫いたそうです。
海童神社(中通島)
かつて捕鯨で栄えた有川地区。
クジラのアゴの骨でできている参道とは!
世界遺産「頭ケ島天主堂」(頭ケ島)
頭ケ島天主堂は、信者さんたちが「自らの労力」を奉仕し、「地元の岩」を積み上げて造り上げた、全国でも珍しい石造りの教会。
こちらも鉄川与助さん設計です。
階段脇は神道を思わせる構造、柱の上には三位一体を表すクローバーが見えます。
外観は重厚な雰囲気ですが、中は折り上げ天井に花柄をあしらった優しい雰囲気で、輸入品であるステンドグラスも鮮やかでした。
なお、ヨーロッパの教会のステンドグラスでは、キリストや聖母マリアなどの像が描かれていることが多いですが、五島列島の教会ではそうしたステンドグラスは見られません。
当時、ステンドグラスは高価な輸入品で色や数に限りがあったこと、また技術的に木枠で細かな表現をすることが難しかったそうです。
キリシタン洞窟とハリノメンド(土井ノ浦港より出発)
キリシタン弾圧から逃れるため、4家族8人が約3ヶ月間隠れ住んだキリシタン洞窟。
近くには、聖母マリアが幼いイエスを抱く姿のシルエットに見える、ハリノメンドと呼ばれる穴のあいた岩礁もあります。
世界遺産「江上天主堂」(奈留島)
江上天主堂は、クリーム色の外壁と水色の窓枠が可愛らしい木造の教会。
こちらも、鉄川与助さんの設計です。
付近の湧き水の影響でとても湿気が強い地域だそうで、風通しをよくするため、高床式になっていたり、軒裏には装飾を兼ねた十字マークの通風口が施されています。
中は、本格的な立面構成で三廊式、壁は白漆喰で塗られ、茶色のリブ・ヴォールト天井(コウモリ天井)の美しい曲線が祈りの空間を包んでいました。
その他、手書きされた柱の木目や、手書きされた花の絵の窓ガラスを見ることができました(当時、ステンドグラスを購入する資金が足りなかったそう)。
世界遺産「旧五輪教会堂」(久賀島)
旧五輪教会堂は、老朽化で解体される寸前、島内の仏教徒の助言によって価値が再確認され、保存されることになった教会。
ガラス窓を保護するため、鎧戸が設置されているのも珍しいです。
すぐ隣には、現在の五輪教会も。
福江教会(福江島)
クリスマスシーズンだったこともあり、綺麗なイルミネーションを楽しむことができました。
現地の方曰く、この福江教会が島内の数ある教会の中でも、一番華やかなイルミネーションだそうです。
大瀬崎灯台(島山島)
断崖の上に建つ、白亜の大瀬崎灯台。
ここも朝ドラ『舞いあがれ!』の舞台だそう。
展望台から灯台までは、片道で徒歩1時間かかるそうです。
天気はあいにくの曇りでしたが、それでも雄大な五島の自然を感じられました。
井持浦教会ルルド(島山島)
茶色の外壁に、青色のアヴェ・マリアを表すAMのシンボルが印象的な井持浦教会。
奥に進むと、日本最初のルルドを見られます。
フランスの有名な「ルルドの泉」を模したもので、聖母マリアが出現した洞窟の泉から湧き出る聖水をいただくことができます。
持ち帰り用の、プラスチックボトルも販売されていました。
世界遺産でもある五島列島の教会を見学する際の3つのポイント
1)「隠れキリシタン」と「潜伏キリシタン」の違いを意識してみよう
「隠れキリシタン」という言葉は学校の授業で習ったけれど、「潜伏キリシタン」という言葉は初耳という方も多いと思います。
でも世界遺産名は「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。
そう、「潜伏」キリシタンなんです。
恥ずかしながら、現地ガイドさんに指摘されるまで、まったく気にもとめていなかった言葉の違いなのですが、250年間にわたる長い禁教時代を乗り越えてたこの地域だからこその歴史的背景が、この言葉にはありました。
言葉の違いを簡単にまとめると、次の通り。
江戸幕府の禁教下で、神道や仏教など土地の宗教と混交しながらも、キリスト教信仰を子孫に継承した人々のこと。解禁後はカトリックへ復帰。
明治になり、解禁状態になってもカトリックに戻らず、自分たちが受け継いできた潜伏信仰をそのまま続けた人たちのこと。現在もいらっしゃる。
他にも「ミサ」ではなく「ごミサ」など、この地域ならではの表現も。
言葉の違いを意識しながら現地ガイドさんの説明を聞くと、より理解が深まります。
2)脱ぎ履きしやすい靴で訪れよう
ヨーロッパの教会とは違い、五島列島の教会は靴を脱いで中へ入ります。
旅したのが冬だったこともあり、寒さ対策のためにブーツで訪れたのですが、ブーツの脱ぎ履きが毎回大変でした。
ぜひ脱ぎ履きしやすい靴で訪問されてください。
3)見学や移動手段の事前予約を忘れずに
世界遺産の構成資産になっている教会は、個人・団体問わず、事前予約が必要です。
なぜなら現在も信者の方々の祈りの場であり、ミサや葬儀などにより見学できない場合や、一度に多くの見学者を受け入れられない場合があるからです。
また、構成資産になっていない教会の場合、少数の信者さん(島によっては1名)によって守られている教会もあるので、事前予約しないと、そもそも鍵がかかっていて見学できないこともあります。
加えて、五島列島のインフラはまだ不十分なので、移動手段を事前に確保してからでないと、どこにも移動できません。
- レンタカーをその場で借りようとしても、島にあるレンタカーの台数は限られている
- タクシーを呼ぼうとしても、島によってはタクシー会社が1社しかなく、車も2台しかない
- 海上タクシーも数に限りがある
現地ガイドさん曰く「都市部の人は島に来たら何とかなると思っている方が多いけれど、すべて手配してからじゃないと、身動き取れないよ。インフラが整っていない分、雄大な美しい自然が保たれているんだけどね」と。
五島列島への旅は、見学先の教会・移動手段・ホテルなど、すべての予約を済ませてから出発を。
自分ですべて手配するのが面倒だったり、島巡りを希望されるなら、旅行会社や観光協会、現地船会社が開催しているツアーを予約されるのが安心です。
飛行機?フェリー?五島列島への行き方
五島列島へは「飛行機」と「フェリー」どちらで行くのがおすすめか。
私は時間優先で飛行機を利用したのですが、行きも帰りも本当にラクでした。
飛行機の場合 | フェリーの場合 | |
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福岡から福江島まで | 約40分 | 約8時間半 |
長崎から福江島まで | 約30分 | 約3時間 |
離陸してシートベルト着用サインが消えたかと思えば、すぐに「あと10分後に着陸態勢に入ります」とアナウンスされるほど。
ドリンクサービスで配られたジュースを飲んだら、あっという間に到着した感じでした。
福江島が近づくと、冒頭でお伝えしたように、鬼岳も機内から眺めることができました。
以上、五島列島と世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の観光レポでした。