こんにちは、SORESEKAこと「それは、世界遺産がきっかけだった。」編集長のMamiです。
先日、京都・嵐山にある福田美術館と嵯峨嵐山文華館の新しい共同企画展「木島櫻谷」のプレス内覧会に出席してきたので、その見どころをご紹介します。
美術館のプレス内覧会に招待していただきました
以前、嵯峨嵐山文華館と福田美術館を取材させていただいたご縁で、今回は2館で新しく共同開催される企画展『木島櫻谷』のプレス内覧会にご招待いただきました。
学芸員の資格も持っているぐらいミュージアムが好きなので、ライターとして、こうしてまたミュージアムに少しでも関わることができ、幸せでした。
私の記事を読んで、実際に美術館まで足を運び、ミュージアムカフェでパフェを注文してくださった読者の皆様、ありがとうございます!
そして今回招待してくださった美術館関係者の方々にも感謝します。
当日は、新聞社や雑誌社、美術関係者とみられる方々が出席していました。
正直なところ、私が専攻していたのは考古学なので、日本美術は詳しくなく、木島櫻谷という画家の名前も今回のご縁で初めて知りました。
ですが、当日は学芸員さんが作品ごとに見どころを解説してくださったので、櫻谷や作品に対する理解が深まり、有意義な鑑賞時間を過ごすことができました。
それでは早速、今回の企画展の見どころをご紹介していきます。
福田美術館と嵯峨嵐山文華館による共同企画展「木島櫻谷」
本日、2021年10月23日より、嵐山にある福田美術館と嵯峨嵐山文華館、2館共同開催の企画展『木島櫻谷〜究めて魅せた「おうこくさん」』が始まります(2022年1月10日まで)。
近代の京都画壇を代表する巨匠・木島櫻谷(1877-1938)は、近年、動物画を中心に人気が高まっている画家です。
櫻谷の展覧会はこれまでも各地で開かれてきましたが、今回は合計116点もの作品が展示される、過去最大規模のもの。
しかも、そのうちの初公開作品数は、福田美術館で24点、嵯峨嵐山文華館で30点。なんと約半数が初公開作品となります。
内覧会にて一足お先に鑑賞させていただいたので、そのハイライトをお届けします。
第1会場 福田美術館
渡月橋から川沿いを歩いて約2分のところにある福田美術館。
ギャラリー1&2
今回の企画展では、六曲一双の大きな屏風絵が多数展示されており、華やかで見応えがあります。
中でも心奪われたのは、約110年ぶりの公開となる「細雨・落葉」です。
右隻は晩春から初夏の景色で、霧雨の中、仔鹿がこちらを向いています。
左隻は晩秋の景色で、猿が落葉をもたらす風の音に驚いているかのよう。
「見返り美虎」とキャッチコピーが付けられた虎図も、その切なげな眼差しに、思わず足が止まります。
しかし、こうした愛くるしい動物画もあれば、一転して、『太平記』を画題にした歴史画もあり。
艶やかな女性たちの人物画もあり。
山水画もありと、幅広いジャンルの絵を描いていることに驚かされます。
そして、こうした作品たちは文部省美術展覧会(文展)にて6年連続で上位入賞を果たしています。
企画展の副題にもなっているように、動物画も、人物画も、歴史画までも「究めて魅せた」特別な存在だったことが伺えます。
請われて海外の展覧会に出品することも多かった櫻谷。屏風の展示方法に慣れていない海外の展覧会に合わせ、最初から額装ありきで制作した作品もあります。
パノラマギャラリー
2階奥のパノラマギャラリーでは、櫻谷の画風や筆致の研究もされた、現代画家・岡原大崋さんの作品が主に展示されています。
特に、今回の展覧会のために描かれた「嵐峡風水図」は「すごい」です。
タイトルから嵐山のみを描いていると思われるかもしれませんが、実は右下に渡月橋と福田美術館が、左上に天橋立が描かれており、京都全体を俯瞰したような風景画となっているんです。
実際に目の当たりにすると、その超絶技巧に驚かされます。
ぜひ「ここに福田美術館がある!」「あ、天橋立を発見!」と楽しく探しながら鑑賞されてみてください。
第2会場 嵯峨嵐山文華館
続いて、福田美術館から歩いて約3分ほどの嵯峨嵐山文華館へ。
1階企画展スペース
嵯峨嵐山文華館では、櫻谷の人となりが偲ばれる作品や遺品が展示されています。
たとえば、櫻谷のトランク・帽子・時刻表・矢立て(携帯用筆記用具)。
弟子たちとよく写生旅行に出かけたそうで、下鴨神社を参拝した際の作品も残されています。
櫻谷は晩年、京都市・北西の衣笠へと移住したのですが、次第に弟子や若手画家たちも集結したため、衣笠は「絵描き村」と呼ばれるように。
そこで、衣笠絵描き村で絵筆をとった画家たちの作品も展示されています。
個人的に印象的だったのは、菊池契月の「浦島」です。
あの浦島太郎が画題なのですが、中幅の眠りにつく浦島太郎と舞姫たちの表情がなんとも幻想的で、不思議な世界へ誘われます。
2階の企画展スペース
2階の企画展スペースは120畳の大広間なので、靴を脱いで進みます。
青年期の櫻谷は、扇に絵を描き販売することで画材などを購入していたそう。限られた筆数で巧みに水流や鳥の姿を描いており、すでに相当の腕だったことが伺えます。
一方、晩年の作品の中には、趣味だった漢詩で心境を表現した作品も。
順路最後の作品は、母校である明倫小学校に贈った富士山。あえて山頂を大きく切り取った構図で力強く描かれています。
一人の画家の足跡をたどる展示ストーリー。櫻谷芸術をたっぷりと堪能できました。
ミュージアムショップ
美術館に立ち寄ったときのもう一つの楽しみといえば、ミュージアムショップ。
「婦女図屏風」のハンドクリームは使うたびに美意識が高まりそう。
200ページ超の図録は見応え・読み応えたっぷりなので、ゆっくり芸術の秋を楽しめそうです。
「木島櫻谷」展のお得なチケット
櫻谷芸術の全貌を通覧できる、かつてない規模の展覧会。
少しお得になる「2館共通券」(大人2,000円)や木島櫻谷旧邸も巡れる「櫻谷さん3館共通券」(2,400円・限定500枚)もありますよ。
ミュージアム名:福田美術館
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
電話番号:075-863-0606
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:火曜日・年末年始・展示替期間
入館料:一般1,300円、高校生700円、小中学生400円
ミュージアム名:嵯峨嵐山文華館
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町11
電話番号:075-882-1111
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:火曜日・年末年始・展示替期間
入館料:一般900円、高校生500円、小中学生300円
嵯峨嵐山文華館の公式ホームページ
それぞれの美術館自体の見どころやミュージアムカフェについては、以前に紹介しているので、上記の関連記事も合わせてご覧ください。
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